父が脳梗塞で倒れたとき、いろいろな人が助けてくれました

日曜日の朝のことだ。
父が脳梗塞で倒れたという連絡で叩き起こされた。

父が母や友人と一緒に車で山登りに出かけている最中に倒れたということらしい。
父はすぐに近くの病院へ入院となり、母はその日は病院に泊まり、帰宅は次の日になった。

電話で短い時間しか話すことが出来なかったためその日は詳細が分からなかったのだが、母が帰ってきてから詳しい状況を知ることが出来た。
現在父は意識もしっかりとあり、手を動かしたり話すことも問題なく出来るようで、とりあえず後遺症などはなさそうだということだった。
これを聞いてようやく一安心できた。


その後、母からその倒れてから入院までの状況を聞くことが出来たのだが、母の話によれば今回父と母はいろいろな人に助けられたということだった。


今回父の脳梗塞が発病したのは、高速のパーキングエリアに車を止めて休憩中のことだった。
車を降りトイレに行っていた父が、そこから戻る途中で急に足がもつれて全く歩くことが出来ないという状況になったのだ。
それを見た母は父を座って休ませるのが精一杯で、慌てるばかりで何も出来なかった。

だがその時一緒にいた友人の一人に救急医療の知識を持っている人がいたため、その人はすぐに脈を取り、体調がただ事ではないと判断するとすぐに救急車を呼んでくれたのだ。
そして救急車で病院へと向かい、そこでの診察の結果は脳梗塞ということだった。


そしてこれは今回の話で初めて知ったのだが、何でも脳梗塞には発病から3時間以内であるならば使用できるという血栓を溶かすための強力な薬があるらしい。
今回は発見と入院が早かったためその薬を使うことが出来た。
何でも今回、入院から検査を終えた時の発病からの経過時間は、2時間40分。

まさにギリギリだった。
もしその場に医療知識を持ったという友人がいなければ、座って休ませるだけで時間を無駄に浪費してしまい、タイムリミットに間に合わなかったかもしれない。
そうなれば病状は、より深刻なものになっていたことだろう。


こうしてなんとか早く治療を受けることが出来はしたのだが、問題は山積みだった。
何しろ今回は車で山登りに出かける途中での入院だ。
入院の準備なんて何も出来ていないし、それに今回入院した病院の場所は自宅の東京からかなり離れた群馬県
そのため準備に一旦家に戻るということも不可能だった。
そしてそれ以前に、今回の件を家に連絡しようにも携帯電話の残り電池があまりないという状況だったのだ。


こんな状況を助けてくれたのが、その病院にお見舞いに来ていたという見ず知らずの人だった。
その人は「私を信用して携帯電話を預けてくれるなら、充電して返すから」と言ってくれた。
そのおかげで母は携帯に充電することが出来た。
さらに「お腹がすいているだろうから」といなり寿司をもらったり、家に帰るときは駅まで車で送るということまで言ってくれた。
結局駅まで送るのは、母が帰る日の朝に忙しくて会うことが出来ず実現しなかったのだが、その心遣いがとても嬉しかったということだった。

母はお礼がしたいからとその人に名前を聞いたのだが、名前を教えてくれず「今度どこかで困っている人を見かけたら、その人を助けてあげればいいから」と言ってくれたそうだ。
別の困っている人を助けることこそが、一番の恩返しということなのだ。



以上のようなことを家に帰ってきた母から聞くことが出来た。
今回のことを思い返してみると、父は非常に運がよかったと思うし、そしてそ以上に助けてくれた人のありがたさを感じることが出来た。
困っているときに助けてくれることのありがたさが身にしみて分かったのだ。


「今度どこかで困っている人を見かけたら、その人を助けてあげればいいから」
というその言葉は既に使い古された言葉なのかもしれないが、それでも心に響いた。
だからこれからはもっと困っている人は助けることにしよう。
何せ今回自分は助けてもらったのだから。
だったら今度は自分が助ける側に回るということだ。それが今回の恩返しなのだから。

それに「困っている人を助ける」ということは逆の立場で見れば「自分が困ったときに助けてもらえる」ということでもある。
何も助けるといっても大金を投じてとか、そんな大それたことでなくてもいい。
自分の目の届く範囲。自分の手の届く範囲。
ただそれだけでいいから、助けるということはとても大切なことなのだ。
今回はそのことを学ぶことが出来た。



では人助けの手始めにということで、今回あなたの親族にも襲い掛かるかもしれない脳梗塞について、今回知った知識を公開することにしよう。

なんでも脳梗塞には「前兆」ともいえる症状が起こるらしい。
例えば、突然手が痺れて物が持てなくなるとか、突然歩くことが出来なくなるとか、突然舌がもつれてしゃべれなくなるとか。
それらの前兆は数分で収まるらしいのだが、そこで放置せずすぐに病院に行って欲しい。
そしてそこで素早く対処すれば、最悪の事態は回避することも可能ということだ。
このことは是非とも忘れないでいてほしい。


今の自分に出来ることはこの程度のことだろう。
でも「この程度」のことを積み重ねることが、きっと大切なことなんだ。