ウチのサイトもついに4周年

(前回の続き)
そう……、それは1995年の年末のこと。
俺は毎年年末に行われる冬のコミケに行っていた。
そこで購入した同人誌の中にあったのがとあるメガドライブ本。
まあそれ自体はどうと言うことはないのだが、ただ俺が家で同人誌をチェックしているときにふと目に止まったのが、その同人誌を買ったときにもらったインフォメーションペーパーだったのである。

まあ、同人誌を購入したときにそのようなペーパーがついていること自体は特に珍しくもなかったのだが、ただそれが少し変わっていたのは書かれているのがただ一面ひたすら文字ばかりだったということ。そしてそれは明らかに通常のインフォメーションペーパーにあるようなまともな情報が載っていないということ。明らかにそれは今まで見たものとは異質なものだった。
そしてそれはどんなものなのかとちょっと読んでみたら……。

「おもしろい!」

もうスゴイ! びびった!
とにかく面白い。笑えるのだ。
まるで友人に語りかけるようなラフな文体と日常的な話。それでいて突拍子もない発想と熱い魂の叫びが文中に垣間見えるおかしさ。そしてその面白いところを分かりやすく強調するためのフォント拡大。
その全てが鮮烈で、こんな笑えるものを文章で書くという行為自体に俺は戦慄を覚えたのだ。

……と、こう言うと最近のテキスト系ネット文章に慣れ親しんでいる人たちにはなんでそこまで俺がそれをスゴイと感じたのか分からないかもしれない。
しかし笑える文章と言うものがここまで市民権を得てきたのは、実はネットのテキストサイトが多数出てきてからだったりするのだ。
現に実際に書店を見てみれば、ギャグ系の文章書籍なんてほとんど限られてくる。
あったとしてもお笑い芸人がネタを載せた本のようなものくらいだろう。後は雑誌やラジオの投稿ネタをまとめた本。後はおもしろ看板とかおもしろ写真を紹介したようなものくらい。
それくらいギャグ文章というのは、ネットが広まる前は世間ではほとんど見られないものだったのだ。

しかしそのインフォメーションペーパーの中には確かにそれがあった。
そう、そこには確かにそれが存在したのだ。
まだインターネットもそれほど広まっていなかったその当時、俺はそのギャグ文章を目にしてとんでもないほどの衝撃を受けたのである。

そしてそのインフォメーションペーパーを作った人。それは「栗尾京介」という名だった。
その瞬間、俺にとって彼こそが心の師となったのだ。
そしてそのインフォメーションペーパーを読んですぐ、俺はノートにつたないながら手書きで文章を書いていった。

何のため?
もちろん今度の新年度に発行される大学ゲームサークルの会誌に原稿を載せるためだ。正直言って俺は今まで文章なんてまともに書いたことはなかった。学校の宿題でもない限り文章なんてまるで書かずに20年ほど過ごしてきたし、そもそも本自体読書感想の宿題以外では読んだこともない。でも俺はこのとき書いた。ただ必死に書いた。何故ならわが師「栗尾京介」氏が作り出したそのギャグ文章の世界を自分でも体現したかったから。
子供の頃からお笑い番組が大好きで、そこで見たような面白いギャグを実際に言ってみたくて、でもそういうことが出来なくて、でも文章ならそれが出来るかもしれなくって。
ただその気持ちで書いていったのだ。

そしてそれはついに完成した。
年が明けて1月の授業が始まるとそれを学校に持っていき、それをサークルの人に見せた。そして「これを次の会誌に載せてくれ」と言った。友人が読んだ。そして笑った。ほんのわずかだけど、その瞬間師匠の作り出した世界に近づくことが出来たのだ。

こうしてサークルの会誌の名物コーナー、コラム「ゲームマニア大吟醸」は誕生した。
その「ゲームマニア大吟醸」は、メガドライブソフト「バトルマニア大吟醸」をふと思い出し適当につけたものだ。まさかここまで長い付き合いになるとは思わなかった。

これこそが「ゲームマニア大吟醸」誕生までの経緯であり、わが心の師「栗尾京介」氏との出会いである。これがなければこのサイトは生まれなかったのかもしれない。

……って、まあ実際はここで出会わなかったとしても、後にインターネット普及後にテキストサイトを見て影響を受けていたという可能性はあるのだけども。


ちなみに現在わが師「栗尾京介」氏は何をやっているのかというと、インターネットラジオなるものをやっているらしい。ホントにすごいと思う……。今やネット文化が花開き、テキストサイトが百花繚乱の大繁栄をしているそのときに、「その場所は既に通過した場所だ!」と言わんばかりに更なる上の境地を目指しているというその姿。
やはり俺は師匠にはかなわないと思わされてしまうのだ……。


以上、「ゲームマニア大吟醸」誕生への道でした。なんかもうかなりまとまりのない話になってしまったけれども。
しかしこれを書くために久しぶりにその師匠のインフォメーションペーパーを読んでみたのだがやはりめちゃめちゃ面白かった。
果たして自分はそこに近づくことが出来ているのだろうか?
まあ何にせよ、サイトをやり続けるしかないなあと思いつつこの話終わりにしようと思います。